「看護師」と一言でいっても、どの病棟や施設・科で働くかによって求められるスキルも職場の雰囲気も異なります。どの科にも共通する看護業務を除くと、まったく新しい技術やスキルをインプットしなければならない看護師も多いはず。
眼科で働く看護師のなかには、「転職前に思い描いていた職場環境ではない」「求められる業務に対応することができず、眼科看護師を辞めたい」……という方もいるのではないでしょうか。
いま眼科への転職を検討している方は実際、眼科で働くとどのような体験が待っているのか気になるはず。
そこで記事では、眼科看護師が眼科を辞めたいと思う理由やネットに寄せられた仕事の悩み、仕事を辞めるべきか続けるべきかの判断基準、眼科看護師の1日の流れをご説明します。
眼科看護師の仕事がつらい・辞めたい理由とは?
眼科看護師が仕事をつらいと感じる理由、辞めたいと思う理由を5つまとめてみました。
看護師としてのやりがいが少ない
看護師の仕事のやりがいを感じる瞬間として、よくあがる声には以下があります。
- 担当した患者さんの病気やケガが治り元気になったとき(ときには患者さんの「命を助けた」瞬間)
- 患者さんやそのご家族から感謝の言葉をかけてもらったとき
- 一人ひとりの患者さんと深い関係性が築けたとき
- 「あなたが看護師で良かった」と患者さんに言われたとき
どれも看護師としてやりがいを感じる瞬間ですが、眼科看護師として眼科で働く場合、一般病棟勤務と比べるとあまり上記の体験は期待できないかもしれません。
勤務する眼科施設の規模感や特徴にもよりますが、眼科看護師は人手が足りない場合、医療事務(受付事務)や視能訓練士の業務を一部行なうことがあります。傾向としては、以下のような眼科施設の場合よく見られる印象です。
- 医療施設としての規模が大きくない眼科施設
- 手術頻度が少なく(または簡単な治療のみ)、手術や治療外での看護師業務が少ない眼科施設
- 「看護師も眼科検査を行なうべき」というクリニック(院長)の方針がある眼科施設
- 視能訓練士が不在であり、看護師に有資格者がいる眼科施設
もちろん、基本的には採血や点滴・注射・手術や患者さんの補助といった看護師らしい業務が中心となりますが、そのほかの業務も時と場合によっては担当しなければなりません。
そのため、前職で病棟勤務をしており、看護師らしい生活を送っていた方からすると、少し物足りなさを感じてしまうことも。「看護師としてのやりがいを感じない」は眼科看護師を辞めたくなる理由としてよくあがります。
ルーティンワークが多い
眼科看護師の仕事は、比較的ルーティン化している業務が多いのが特徴です。これは、眼科に限らず、”患者さんの急変など不足の事態が起きにくい科”では、共通して見られる傾向です。
そのため、別の科から転職された方でも、全体の仕事に慣れてしまえばスムーズに日々の仕事を進めることができます。
しかし一方では、業務がルーティン化しているため、どこか物足りなさを感じてしまう方もいらっしゃいます。難しい判断を要するチャレンジングな機会が少なくなると、看護師としての成長実感を得られなくなり「やっぱり病棟勤務に戻りたい!」と思ってしまうのです。
給料が少し低い(夜勤がないため)
眼科看護師には病棟勤務の看護師と違い、夜勤や早朝勤務・多くの残業などはありません。
つまり、仕事とプライベートのバランスを取りやすく、ハードワークを避けることができるというメリットがあるわけですが、一方で病棟勤務の看護師が得られるような「時間外手当」を受け取ることができません。
厚生労働省が発表している「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、眼科看護師の平均年収は約450万円。月給になおすと、平均月給は33万4,400円ほどです。そして、看護師全体の平均年収は約490万円になります。
つまり、時間外手当分 看護師全体の平均と比べて眼科看護師は平均して年収40万円ほど低いことがわかります。もちろん、勤務する眼科施設によって異なりますので、より高年収な職場もあれば、より年収が低い職場もあることは理解しておいてください。
眼科施設に転職する際は、面接の時点でどれくらいの年収が”入社後も含め見込めるのか”慎重に考えることが大切です。
そのうえで、ワークライフバランスの取れた生活を希望であれば、眼科看護師はフィットするでしょう。逆にこれからも年収を上げていきたいという方には、眼科看護師はあまりおすすめされません。
眼科特有の検査機器の扱いが難しい

眼科での検査は基本的に視能訓練士が行ないますが、現場に視能訓練士が不在の場合は看護師が検査を担当するケースもあります。
「看護師としてのやりがいが少ない」の章でも触れましたが、「規模小さい眼科施設」「手術の少ない眼科施設」「院長の方針が強く反映されている眼科施設」では、この傾向が強く見られます。
ほとんどの眼科施設には、「眼科コメディカル」と呼ばれる無資格のスタッフが在籍していますが、この眼科コメディカルも不在の場合は特に、看護師が可能な検査を行なうケースが多いです。
そのため、眼科にはじめて転職された看護師は、眼科特有の検査機器の使い方に戸惑いを示す方も少なくありません。
眼科特有の検査機器には、以下のようなものがあります。
- スペキュラー マイクロスコープ
- ハンフリー視野計
- ゴールドマン視野計
- OCT
- 眼底カメラ
- オートレフクラフトメーター
- ノンコンタクトトノメーター
一通りの検査機器の扱い方は、慣れてしまえば難しいものではありません。経験を積むと淡々と検査していくかたちになりますが、それまでは負担に感じてしまう可能性もあるでしょう。
眼科看護師の仕事の悩み
実際に眼科看護師は転職後どのような仕事の悩みを抱えているのでしょうか。
ネット上にいくつかの悩みの声が吐露(とろ)されていましたので、その一部を共有します。
【眼科の勉強が大変】私は、12年の病棟経験のあと、眼科へ転職した看護師です。 眼科では、ope看になると重宝されると聞いたためです。残念ながら、半年で転職してしまいました。 その眼科は、わたしにとってレベルが高すぎたからです。眼科のトップレベルの看護師が集まっていたので、切磋琢磨できる環境でした。 はじめは、勉強にも熱が入り、一生懸命ついていこうと寝ても覚めても勉強に明け暮れました。 病院に居残りをしているときには、先輩も勉強に付き合ってくれていました。学べる事例も興味深かったです。小児の角膜に鉄粉が刺さってしまっていた事例では、患者さんの視力を落とさずに回復させていました。 眼球熱傷の事例も見ましたし、救急で患者を受け入れていたので、とても勉強になりました。でも、時間が経つにつれて、勉強が追い付かなくなっていき、目標を見失ってしまいました。 ope看になると、重宝はされます。 でも、レベルが高すぎてついていけませんでした。A.Dさん(32歳 女性) |
【眼科の人間関係が大変】私は、病棟を5年経験したあと、眼科へ転職しました。 検査が多くて、技術が付くかと思ったからです。でも、辞めようか悩んでいます。 先輩に辞めることを迫られているからです。最初の5日間は指導をしてもらえましたが、それ以降は放置されました。 頑張ってなんとか視力検査や眼底検査の介助、診察の介助に付けるようになりました。 しかし、遠近両用眼鏡あわせが来ると、先輩に「あなたにはまだ早い」と、仕事を取り上げられます。医師には「そろそろメガネ合わせもできるんじゃないの?」と言ってもらえていますが、先輩は仕事を取られるのが嫌なのか、私にカンタンな仕事しか回してくれません。自分なりに勉強をしていても、仕事を任せてもらえないと業務が覚わらないので、正直つらいです。 検査が多いので、技術はつきました。 でも、先輩に退職を迫られていて仕事も任せてもらえないので、辞めたい気持ちでいっぱいです。別の眼科に転職しようか迷っています。O.Rさん(27歳 女性) |
【眼科の検査が大変】私は、病棟を3年経験したあと、眼科クリニックへ勤めています。 慣れると面白いと先輩から聞いたので、やってみたいと思いました。視力検査がむちゃくちゃ大変だったので、転職を後悔しました。眼科は忙しいので、指導してもらえる余裕がありませんでした。 機械も検査も全く分からなかったので、覚えるまで時間がかかって骨が折れました。視力検査の方法やCLの取り扱いは、教科書を見てもあまり載っていないです。 だから、メニコンの研修センターへ行ったり、眼科コメディカル講習に参加して学びました。 眼科の勉強がこんなに大変だとは思いもしなかったです。結局、勉強疲れでへとへとになってしまいました。眼科は、慣れると面白いと思います。 検査の連続なので、時間が過ぎるのがすごく早いし、白内障から他科の疾患とのつながりまで学べます。でも、視力検査がむちゃくちゃ大変なので、転職を後悔しています。 眼科でやっていけるのか、この先不安でいっぱいです。時期を見計らって、また転職をしようと思っています。Y.Yさん(4年目 女性) |
※引用元:眼科へ転職したい看護師に贈る 眼科がどれだけ大変かを語った体験談9選 – 日本看護研究センター
眼科看護師を続けるべきか・辞めるべきかの判断基準

ここまで、眼科看護師のネガティブな内容をお伝えしてきましたが、もちろん、眼科看護師には合う人とそうでない人がいます。
どのような人は眼科看護師を続けるべき(向いている)のでしょうか。続けるべき・辞めるべき判断基準をお伝えします。
プライベートを優先したい人は続けるべき
眼科施設には夜勤はありません。残業に関しても忙しい病棟勤務と比べると少ないのが実情です。
そのため「仕事とプライベートのバランスをとりたい」「今はプライベートを優先したい」「子育てと並行しながら無理なく働きたい」という方には、眼科看護師が向いているでしょう。
眼科領域に強い興味・関心がある人は続けるべき
眼科領域に強い興味・関心がある方は、もちろん眼科看護師を続けていくべきです。眼科施設には看護師に求められる眼科特有の業務も多いですが、眼科一本に絞ってキャリアを進めていく考えであれば、将来の問題はないでしょう。
もしも眼科領域で専門性を高めていきたいのであれば、将来的に視能訓練士の資格も取得し、より対応できる範囲や知識を深めていくことが推奨されます。
眼科看護師の1日の流れとは?
最後に、一般的な眼科看護師の1日の流れをご紹介します。レーシック手術などの手術がない眼科施設の場合、おおむね以下のような流れで1日は進んでいきます。
8:30 出勤 8:40 外来受付の準備(待合室・診察室の整備や設備の点検など) 9:00 午前中の診察(患者さんの受付や案内、検査や診察の補助) 13:00 お昼休み 14:00 午後の診療(午前中と同じ) 17:30 受付修了、片付けや備品の補充などの明日に向けた準備 18:00 退勤 |
眼科看護師にはほとんど残業はありません。ただし、不定期または定期的に「勉強会」が終業後に開催されることはあるそうです。
とはいえ、仕事とプライベートのバランスを無理なく取れるのが、眼科看護師のメリットといえます。
自分との向き不向きは慎重に判断しよう
看護師に限らず、転職活動は自分のキャリアを進める重要な意思決定です。確かに、「自分にあわなければまた別の転職先を探そう!」という思いつめ過ぎない姿勢は自分を守るために大切ですが、とはいえ転職前にはできる限り慎重に判断するようにしましょう。
記事でもご説明してきた通り、”眼科看護師には合う人と合わない人”がいます。それはどの科でも同じですが、自分の今後のキャリアやプライベートをどのように過ごしていきたいのかという視点から、眼科看護師への転職が妥当かを判断されてみてください。
その際、自分だけで判断するのではなく、業界に精通した転職エージェントに頼ってみるのもおすすめです。眼科業界専門の『メドキャリア』には、業界を知り尽くしたエージェントスタッフが在籍しています。
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