妊娠中はつわりや立ちくらみなど、急に体調が悪化しないか不安がつきまといます。特に、通勤時の満員電車に悩んでいる人は多いでしょう。そこで今回は、電車内での体調不良に備えるためにできることや、勤務時間をずらせる通勤緩和制度について説明します。
妊娠中の通勤電車でのポイント
妊娠中はつわりや身体的・精神的ストレスによる体調不良が起こりやすく、本来ならば満員電車は避けたいもの。
とはいえ、会社によってはリモートワークなど、ほかの勤務形態への変更がどうしてもできないこともあるでしょう。
そのような場合、妊娠中の通勤電車では以下に気をつけて過ごしましょう。
薄着は避け、常に上着を忘れずに
夏場の通勤電車では冷房が強く効いていることがあります。体を冷やし過ぎないために、夏でも薄着はせず、羽織れる上着を持ち歩きましょう。
また、体を締めつける服を着ていると気分が悪くなってしまう恐れもあるため、できればゆったりとした服装を心がけるとよいでしょう。
つわりは好きなにおいがついたマスクで対応
車内にこもったにおいで吐き気をもよおす可能性がある場合は、好きなにおいを染み込ませたマスクを着用するのがおすすめです。
また、個人差はありますが、つわりの症状が空腹時に強く出る人もいます。
そういった人は、アメやグミなどを持ち歩いてこまめに口にするとよいでしょう。
妊娠初期はマタニティマークを活用
快適に通勤するための工夫も大事ですが、マタニティマークも活用しましょう。
マタニティマークは、妊婦が外出するときに身につけ、周囲に妊婦だと理解してもらいやすくするものです。
特に妊娠初期は、外見からは妊婦だと見分けがつかないためマタニティマークを積極的に活用するのをおすすめします。
電車やバスなどの交通機関で席を譲ってもらうためだけでなく、職場や飲食店で体調を崩したときに、周囲に妊娠中であると気づいてもらいやすくなります。
マタニティマークをつけているからといって、必ず配慮してもらえるわけではありませんが、つけていないときよりも配慮してもらえる場面は増えるでしょう。
妊娠中は「通勤緩和」で満員電車を回避
妊娠中の体調変化は個人差がありますが、通勤時のストレスがつわりの悪化や流産・早産につながる恐れもあります。
これを避けるために作られた制度が「通勤緩和」です(※1)。
妊娠中であれば利用でき、バスや電車などの公共交通機関だけでなく、自家用車での通勤にも適用されます。
通勤緩和は、会社が妊娠中の女性従業員に対して取るべき勤務の軽減措置です。
医師などから通勤緩和の指導があった場合には、女性従業員が申請することでこの措置を受けられます。
通勤緩和で受けられる措置の例
通勤緩和で受けられる措置の例としては以下のようなものがあります。
時差通勤 | ・始業時間と終業時間をそれぞれ30~60分ほどずらす ・フレックスタイム制度の適用 |
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勤務時間の短縮 | ・1日30~60分程度の時間短縮 |
交通手段・ 通勤経路の変更 | ・混雑の少ない経路への変更 |
この中でも、時差通勤や時短勤務が用いられることが多いようです。
この2つの制度を利用すると、「出社時間を1時間遅く、かつ退社時間を1時間早くして勤務時間を2時間短縮する」という調整も可能になります。
公務員や一部の企業では、有給休暇を1時間単位で取得でき、勤務時間を短縮しても給料額をそのまま維持できるようにしている例もあります。
そういった制度がない企業の場合は、短縮された2時間分の給与は支払われないことが一般的なため、事前に確認しておきましょう。
母性健康管理指導事項連絡カードもあわせて使おう
通勤緩和は、男女雇用機会均等法の第13条に規定された「勤務の軽減等」に当たりますが、「勤務の軽減等」には通勤緩和だけでなく以下の措置も含まれます。
・休憩に関する措置(休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置)
・症状などに対応する措置(作業の制限、休業等の措置)
実際には、これらの措置を適切に組み合わせて実施することになりますが、その判断・指導は医師や助産師が担うことになります。
そこで、医師や助産師からの指導内容を正しく職場に伝える方法として導入されているのが「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」です(※2)。
これは、妊娠中の方だけでなく出産後1年未満の方も活用できる制度です。
通勤による体調変化や赤ちゃんへの影響が心配なときは、医師・助産師に相談してみてください。
診断や指導を受けた場合、母健連絡カードを利用して勤め先に通勤緩和を申し出ましょう。
もちろん、母健連絡カードを使わなくても、勤務先に医師からの指導内容を明確に伝えられれば、通勤緩和のための措置を利用することができます。
あくまでも、医師の指導内容を明確に伝えるためのツールとして、このカードを利用してください。
個人差はあるものの、妊娠中は通勤による自身の体調変化や赤ちゃんへの影響に注意が必要です。
不安なことがあればすぐに医師に相談し、通勤緩和などの指導を受けた場合は速やかに勤め先に申し出ましょう。
通勤のストレスを極力減らす努力をしつつ、通勤緩和などの制度も積極的に活用しながら、安心して出産を迎えたいですね。