妊娠中は疲れやすい…体調の悪化を理由として休職できる?

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妊娠中は疲れやすい…体調の悪化を理由として休職できる?

妊娠すると身体に急激な変化が起こるため、疲れを感じやすくなります。時期によって症状が異なることもあり、とても大変。そこで今回は、妊娠中に現れる代表的な疲れの症状や対策、働く妊婦を保護する「母性保護規定」や「母性健康管理の措置」について説明します。

妊娠中は疲れを感じやすい

妊娠中は、おなかの赤ちゃんの成長にともなって母体も変化していきます。つわりや腰痛などの(確かに厳密には異なるものの)さまざまな症状が現れることで、体力的にも精神的にも疲れやすくなりますが、どのような症状が現れて疲れを感じやすくなるのか、妊娠の時期別に簡単に見てみましょう。

【妊娠初期:~4カ月】
急激にホルモンバランスが変化するため、体温が高くなり、眠気が起こりやすくなります。つわりや立ちくらみ、貧血などの症状が現れますが、症状そのものによる疲れのほか、変化に慣れるまでの疲れも感じられるでしょう。

【妊娠中期:5カ月~7カ月】
安定期に入るとつわりも落ち着きますが、動悸(どうき)や息切れ、貧血の症状が出やすくなります。原因は、妊娠により血液の量が増えて心臓に負担がかかることと、血液中の鉄分が減少するため。ホルモンバランスの変化によって皮膚のトラブル「妊娠性掻痒(そうよう)症」が起こるケースもあります。

【妊娠後期:8カ月~】
大きくなった赤ちゃんの重みで、背中や腰の痛みを強く感じるようになります。胎動や姿勢を変えられないことによる睡眠不足、貧血、おなかの張りなども。腸や膀胱(ぼうこう)が圧迫され、便秘になったりトイレが近くなったりすることもあります。

妊娠中に感じるつらい症状と対策

次に、妊娠中に現れやすい症状を種類別に確認していきましょう。

つわり

つわりは主に5つのタイプに分けられます。

【吐きつわり】
気持ちが悪く、食べ物を口にするとすぐに吐いてしまいます。食べたくないと思った場合に無理をする必要はありませんが、水分補給はしっかりして、口にできるものは何でも食べましょう。

【食べつわり】
おなかが減ると強い吐き気を覚えるタイプです。常に何かを食べたくなりますが、食べ過ぎは病気を引き起こす原因にもなります。できるだけ小分けにして、少量ずつ取るようにしましょう。お菓子より小さく握ったおにぎりや果物がおすすめ。口の中に長く残るアメやガムもよいでしょう。

【においつわり】
においに敏感になり、気分が悪くなります。例えば、炊いたご飯、お風呂、化粧品、香水など。
原因が分かると避けられますが、通勤など自分での調整が難しい場合はマスクをしましょう。食べ物は冷やすと香りが出にくくなることもポイントです。

【よだれつわり】
普段より唾液が多くなります。飲み込んで対処できるケースから、あふれるほど量が多いケースまで症状はさまざま。タオルで抑えられないほどあふれる場合は、空のペットボトルに出しましょう。また、アメやガムなどを口に入れることで、唾液を飲み込みやすくなります。

【眠気つわり】
「とにかく眠い」眠気つわり。ホルモンが影響していると考えられ、妊娠後期まで続くことも。一番の対策は睡眠を取ることですが、こまめに飲み物を飲む、アメやガムを口にする、少し歩くことなどが効果的です。

腰痛

腰痛は、出産間近だけでなく妊娠初期にも症状が現れます。原因は、骨盤周りの関節や筋を柔らかくする「リラキシン」というホルモン。柔らかくなった関節を支えるために筋肉がこわばるのです。妊娠後期には、体のバランスを保つため姿勢が反り気味になることが原因で腰痛が発症します。

座り続けるなど、長時間同じ姿勢でいることは症状の悪化につながるため、仕事中でも定期的に簡単な運動を心がけましょう。

めまい・立ちくらみ

脱水や貧血、ホルモンバランスの変化による自律神経の乱れなどが、めまいや立ちくらみの主な原因です。妊娠中は血液量が増えて血管が拡張するため、いつも以上に水分補給が必要になります。また、増加した血漿(けっしょう)と赤血球とのバランスがとれなくなり貧血気味になることも。

そのため、レバーや小松菜などの鉄分を多く含む食品の摂取を心がけましょう。とはいえ、とにかく休むことが一番。立ち上がるときはゆっくりと、何かにつかまるようにしましょう。

少しでもつらいと感じたら休憩を取ろう

「母性保護規定」や「母性健康管理の措置」が妊娠中の女性をサポート

妊娠中はさまざまな体調変化が起こるため、体調不良になったり、疲れを感じやすくなったります。少しでもつらいと思ったら休憩を取ることが大切。「仕事のために必要以上の休憩は難しい」という場合は、「母性保護規定」を確認してみましょう。

母性保護規定は労働基準法に基づいており、女性が働きながら安心・安全に妊娠期間を過ごし、出産や育児を行えるようにと制定されました。
具体的には、妊娠中の就業制限や勤務時間の変更、産前・産後休業や育児期間に関する事項が定められており、妊婦が医師などから指導を受けた場合、事業主には適切な措置を取る義務が発生します。

休憩時間については男女雇用機会均等法の母性健康管理の措置で定められた細かな規定があり、妊娠中の従業員は、休憩回数の増加、時間帯の変更・延長などを求めることができます。申請の際は、医師から「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」に記入をしてもらうとよいでしょう。

主治医の指導で休憩をプラス

医師または助産師から休憩に関する指導があった場合は、勤務先に伝えましょう。休憩の時間延長や回数の増加、休憩時帯の変更などが認められています。(男女雇用機会均等法第13条)

こんなときはどうする?

妊娠時の体調悪化を理由に休職できる?

女性従業員が妊娠した場合、母性保護規定により、事業主には休憩や勤務時間、業務内容や仕事環境への配慮義務が生じます。しかしこれらの措置が行われたとしても、仕事に支障が出るほど体調を崩す可能性も考えられます。

出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から出産後8週間までは産前・産後休暇の取得が認められていますが、この期間以前に体調を崩した場合は、休職制度を利用できます。
休職制度はけがや病気の際に利用できる制度で、通常、妊娠での利用はできません。しかし、妊娠中に医師の診断により診断名が付いて診断書が発行されると、休職が可能となります。

さらにこの場合には傷病手当金を受け取れる可能性がありますが、以下の申請条件があるため注意が必要です。

【傷病手当金の申請条件】
・業務・通勤災害以外の傷病であること
・就業できないこと
・連続した3日を含む4日以上仕事に就けなかったこと
・給与が出ていないこと(給与が出ていても、傷病手当金より少なければ差額分が支給される)

傷病手当金は入院だけでなく自宅安静の場合も対象で、休職中にそのまま退職する場合も、一定の条件を満たしていれば受給可能です。


妊娠すると体がさまざまな変化を起こし、疲れを感じやすくなります。今までどおりの作業がつらいと思ったら、母性保護規定を利用しましょう。勤務時間の変更や業務内容の変更だけでなく、適度に休憩が取れる権利もあります。仕事を健康的に効率よく進めるためにも、内容を確認しておきましょう。