医療機関によって「看護方式」は異なりますが、看護方式の違いによって、働き方やスキルアップの仕方などが大きく変わってきます。
なかでも「チームナーシング」は、多くの病院で採用されている看護方式です。この記事ではチームナーシングとは何か、それぞれの看護師の役割、メリット・デメリットなどを解説します。
チームナーシングってそもそも何?他の看護方式と何が違うの?
チームナーシングなど看護方式について「なんとなく知っている」といったように、はっきり理解していない方も多いのではないでしょうか。チームナーシングを中心に、各看護方式についてご紹介します。
(1)チームナーシングとは
チームで行う看護方式の一種です。看護方式とは、高品質な看護を効率的に行うために開発された看護システムのこと。大きく分けて、チームナーシングといったチームで看護する方式と、プライマリーナーシングといった専任で看護する方式があります。
チームナーシングは、1950年代にアメリカで開発された看護方式です。病棟に所属する看護師をいくつかのチームに分割し、チームリーダーを中心に、経験年数やスキル、専門分野などが異なるメンバーでチームを編成します。
チームの分け方は、診療科単位で分ける場合や感染症患者をケアするチームと感染症患者以外をケアするチームで分ける場合などさまざまです。チームメンバーを日や週単位で入れ替えることで、看護の質を一定にします。
チームナーシングでは、チームリーダーが看護方針を立てて、メンバーに指示を出します。メンバーは看護をしながら、患者のコンディションや問題点などを都度報告。チームリーダーは、医師の指示を仰ぎ、メンバーから聞いた患者の状態を伝えます。カンファレンスを行い、チーム内で患者の状況を共有するのも仕事です。
このようにチームナーシングでは、チームリーダーはチーム全体の責任者であり、看護師としての確かなスキルやコミュニケーション力に加え、リーダーシップが必要です。そのため、一人前と認められて初めて任せられる役割です。
(2)チームナーシング以外の看護方式とは
代表的な「プライマリーナーシング」と「固定チームナーシング」について説明します。
・プライマリーナーシングとは
1人の患者を担当看護師が入院から退院まで、トータルでケアする方式です。担当看護師本人が、計画を立てて看護をします。担当看護師が休みの間は、サポート役の看護師が、計画をもとに看護します。
患者一人ひとりに合わせた看護ができる担当看護師が、主体性を持って携われるため、達成感ややりがいを感じやすいといったメリットがあります。
・固定チームナーシングとは
チームで看護にあたりますが、チームナーシングとは異なり、半年から数年の単位で同じチームメンバーやリーダーで看護をします。長期間にわたり同じメンバーで動くため、コミュニケーションをとりやすい看護方式です。チームナーシングとプライマリーナーシング、両方の特徴を兼ね備えています。
その他、病棟内の看護師を2つ以上のチームに分割し、さらに数名ずつの単位に分けた少人数の集まりで担当する「モジュールナーシング」やペアをつくり1年単位で看護にあたる「PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)」といった看護方式があります。
医療機関の状況に合わせて、複数の方法を組み合わせるケースも多く見られます。
チームナーシングのメリット・デメリットって?詳しく解説
広く現場で行われている看護方式であるチームナーシングですが、メリットもあればデメリットもあります。しっかり理解することで、現場でスムーズに看護ができます。
(1)チームナーシングのメリットとは
・一定のレベルの看護を実現できる
複数人の看護師が協力し合いながら看護にあたるため、それぞれの弱点を補えます。看護師間でスキルに差があってもチーム全体で仕事をすることで、一定レベルの看護を実現できます。
・新人育成がしやすい
単独では看護を任せるのが難しい経験の浅い看護師であっても、チームで動くため配置がしやすく、患者の安全をしっかり確保しながら育成が可能です。
・さまざまな角度から看護が可能
人によって物事を見る視点や考え方が違うため、複数人で看護することで、患者の気持ちやサインを見逃さずにキャッチできる可能性が上がります。看護の質があがるのはもちろん、他の看護師の気づきやスキルを見ることは、メンバーの成長につながります。
・精神的負担を軽減できる
チームで看護にあたるため、1人で担当している場合よりも精神的な負担は少なめ。お互いにフォローしたり、相談し合ったりと、協力しながら仕事ができる環境はとても心強いものです。
(2)チームナーシングのデメリット
・患者にとっては誰が担当看護師かわからない
複数人の看護師が1人の患者のケアを分担するため、誰が担当看護師かわかりにくいのがデメリットです。患者によっては、なかなか心を開けない、相談しにくいと感じてしまうかもしれません。
・チームリーダーの力量が問われる
チームリーダーの責任が大きいため、その力量が看護の質に直結します。単に質の高いケアを行うだけでなく、情報共有をしっかり行い、人間関係にも気を配る必要があるなど、チームを引っ張る力が必要になります。
・きめ細やかなケアがしにくい
担当看護師が1人で看護する場合に比べて、患者に接する時間が短くなるため、信頼関係の構築が難しくなったり、小さな変化を見逃してしまったりといったことも起こり得ます。カンファレンスなどでの情報共有をしっかり行うとともに、より患者の様子に注意を払う必要があります。
チームナーシングだけでなくどの看護方式にも、メリット・デメリットがあります。大切なのは、それぞれの特徴を掴んで、メリットは最大限活かし、デメリットは最小限におさえることです。
チームナーシングを成功させるコツって?意識すべきポイント
チームナーシングを成功させるにあたり、最も大切なのがチームワークです。メンバーが一体となって看護にあたることで、よりよい看護を提供できます。
具体的には「互いにフォローし合う」「メンバーの動きやすさに気を配る」「チームで動きやすい環境づくり」の3点が重要です。
(1)互いにフォローし合う
自分の仕事だけでなく、他のメンバーやチームリーダーが大変そうにしているときは、積極的に声がけをして、サポートするようにしましょう。お互いにフォローしながら業務をすればスムーズに進みますし、メンバーに対する感謝の気持ちが生まれて、仕事がしやすい雰囲気になります。
(2)メンバーの動きやすさに気を配る
自分の仕事の状況や患者の状態を共有する際は、メンバーの動きやすさに気を配るようにしましょう。人によって性格や得意不得意があるので、その人に合わせた伝え方をするのが大切です。例えば、周りの目を気にするタイプの人であれば、公の場ではなく個人的に意見を伝えた方がスムーズに進む場合もあります。チームで仕事をする場合は、相手を気遣ったコミュニケーションを心がけましょう。
(3)チームで動きやすい環境づくり
チームでの連携がしやすいよう、全員の予定や仕事内容などの共有・調整がしやすい環境づくりをしましょう。風通しがよく、意見を言いやすい雰囲気を目指し、積極的にメンバー同士でコミュニケーションをとるのをおすすめします。また、日ごろから報告・連絡・相談をこまめに行うとともに、指示系統をはっきりさせておくと安心です。
まとめ
チームナーシングでは、看護師をチームに分け、チームリーダーの指揮のもと看護します。
一定の質の看護を提供でき、新人教育がしやすいといったメリットがあります。患者との信頼関係構築がやや難しく、リーダーの力量に仕事の質が左右されるなどのデメリットもありますが、チームワークやコミュニケーションを大切にすることで、チームナーシングを成功させることができます。