年収や仕事内容など転職先選びで確認すべき点はたくさんありますが、福利厚生もそのひとつです。
福利厚生が充実している職場は、ライフスタイルの変化に対応しやすい、仕事のモチベーションを保ちやすい、生活費を節約できるなどさまざまなメリットがあります。
この記事では、医療業界への転職者向けに福利厚生について詳しく解説します。福利厚生に関する基礎知識や医療業界における福利厚生の現状、チェックすべきポイントなど役立つ知識をまとめました。
福利厚生ってそもそも何?どんなものがあるの?詳しく解説
医療業界の福利厚生について解説する際に、福利厚生の概要・役割について解説します。
1.福利厚生とは
福利厚生とは、企業が給与・賞与とは別に、従業員とその家族に提供する、健康や生活関連のサービス全般を指します。
福利厚生は大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類に分けられます。
<法定福利厚生>
法律に定められた福利厚生のことで、雇用主は導入・実施する義務があります。法定福利厚生は下記の6つです。もし、下記の福利厚生がない場合は、企業が違反している可能性が高いので注意しましょう。
・健康保険
・介護保険
・厚生年金保険
・雇用保険
・労災保険
・子ども・子育て拠出金
<法定外福利厚生>
法定福利厚生以外に、企業が任意で導入している福利厚生を指します。企業によって、法定外福利厚生の有無や導入している制度の種類は異なります。
代表的なものとして、健康診断・住宅手当・家族手当・食事手当・財形貯蓄などがあります。
2.福利厚生の役割
福利厚生の主な役割は、魅力的な条件を提示することによる採用力の向上、働きやすい環境づくりを通した従業員のモチベーション・定着率の向上、社会的イメージの向上などがあげられます。
近年、働き方の多様化や転職者の増加に伴い、福利厚生に力を入れる企業が増えています。
医療業界の福利厚生の現状って?人気のある福利厚生を紹介
総合医療情報ポータル「日経メディカル Online」が2019年8月に登録会員を対象に行った福利厚生に関する調査を参考に、医療業界における福利厚生の現状を解説します。
1.医療業界の福利厚生に対する満足度はある程度高い
福利厚生の満足度は「とても満足している」が5.9%、「満足している」が33.6%、「どちらでもない」が29.9%と、ある程度満足している人が多いという結果です。
勤務先別に満足度を見ると、製薬会社は「とても満足している」「満足している」の合計が53.5%。続く医療機関は35.6%、医薬品・医薬機器卸は33.4%です。
医療業界のなかでも、製薬会社は突出して福利厚生への満足度が高いことがわかります。
ちなみに満足度が2位だった医療機関は、37.9%と高い割合の人が福利厚生に不満を感じており、職場によって差が大きいといえます。
2.住宅手当・家賃補助を利用している人が多い
最も利用されている福利厚生は、「住宅手当・家賃補助」です。その他、「慶弔金」、「特別休暇」といった定番の福利厚生が続きます。
また、従業員が必要な福利厚生メニューを選べる「カフェテリアプラン」や、「託児施設」、「介護・育児休業」を利用したことがあるという回答もありました。
人材採用の成功や従業員満足度の成功などを目指し、ライフスタイルの多様化に合わせた新しい福利厚生を導入する職場が増えているようです。
3.ユニークな福利厚生を導入している勤務先も多い
医療業界ならではの医療関連の補助など、ユニークな福利厚生を導入しているケースも少なくありません。
・ボランティア休暇制度(医療機器)
・コアタイムなしのフレックス制と回数制限なしの在宅勤務(製薬会社)
・歯の治療費補助(製薬会社)
・医療費一部免除 (製薬会社など)
・掃除、お迎えなどの家事代行サービス (製薬会社)
特に製薬会社は、独自の福利厚生が手厚い傾向にあり、満足度の高さにつながっていると考えられます。
医療業界の企業を志望する転職者必見!福利厚生をチェックするポイント
転職時に福利厚生をチェックする際は、次の3つのポイントに気を付けましょう。
1.自分に合った福利厚生があるか
住まいにかかる費用を節約したい場合は「住宅手当・家賃補助」、スキルアップを目指す場合は「資格取得支援」や「留学支援」といったように、自分の希望に合った福利厚生がある企業を選ぶことで、満足度が高まります。
また、企業が用意する福利厚生は、従業員やその家族をどのようにサポートしたいか、組織をどうしたいかが反映されています。
例えば、「部署のランチ会や飲み会の補助」を用意しているのであれば、社員同士のコミュニケーションを重視している可能性が高いでしょう。
自分に合った福利厚生を導入しているかは、転職先との相性を見極めるポイントのひとつといえます。
2.今の勤務先と同じ福利厚生があるか
これまであった福利厚生が転職によってなくなると、不満を感じやすいので要注意です。
例えば、住宅手当・ランチ代補助・カフェ代補助などが充実していた職場から、そういった福利厚生のない職場に転職すると、出費が気になりゆとりがなくなってしまいます。
給与の額面は高くなっても、福利厚生がなくなることで生活が厳しくなるケースも少なくありません。
特に、内資系から外資系に転職する場合は要注意です。外資系はインセンティブが大きく成果によっては高年収が狙えますが、福利厚生は日系企業よりも手薄な傾向にあります。
製薬会社のように福利厚生が充実している業種ほど、転職後のギャップは大きくなるでしょう。年収だけではなく、福利厚生も含め、総合的に条件を判断しましょう。
3.ライフスタイルの変化に対応できる福利厚生があるか
子育てや介護を支援する福利厚生や制度があれば、ライフスタイルに変化があったとしても長く働き続けられます。
もし今後ライフスタイルが変化する予定がある場合、「託児所」や「時短勤務」、「コアタイムなしのフレックス制」、「在宅勤務」などの福利厚生がある職場の方が安心して働けます。
福利厚生だけにこだわって転職すると後悔に?その理由とは
法定外福利厚生は義務ではないため、企業の都合によってなくなったり変更したりするものです。
福利厚生だけに惹かれて入社すると、会社の方針の変化や業績の低下によって福利厚生がなくなった場合、急激に仕事へのモチベーションが下がってしまうかもしれません。
福利厚生などの条件面だけではなく、企業のビジョンへの共感や仕事のやりがい、会社の雰囲気なども含めて、総合的に自分にマッチするか判断しましょう。
しかし、全ての希望を叶える職場に転職するのは難しいため、「介護の予定があるから、関連する福利厚生は必須」など優先順位を考えて転職先を選ぶとスムーズです。
まとめ
福利厚生は、企業が給与・年収以外に、従業員とその家族に対して提供する健康や生活関連のサービスを指します。
医療業界は福利厚生が手厚い傾向にあり、特に製薬会社に勤務する人の満足度は高いという調査結果が報告されています。
転職先の福利厚生をチェックする際は、自分に合ったものがあるか・現職と同じ福利厚生があるか・ライフスタイルの変化に対応できるかといった点に注意しましょう。
ただし、福利厚生だけで転職先を決めると、制度に変更があったときに後悔する場合があります。会社のビジョンや仕事のやりがいなども考慮に入れ、総合的に判断するのをおすすめします。
医療業界で福利厚生が充実した企業を探す場合、医療業界専門の転職サイトを使うと効率的です。医療業界とのパイプが太く一般的な転職サイトよりも医療系求人が豊富なため、福利厚生が手厚い転職先が見つかる可能性が高いでしょう。